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2019/04/19

日本文化・伝統の発信の地として、神社での外国人参拝者対応はとても重要。 覚えた参拝作法は体験として素晴らしい思い出にもなり、他社への参拝にも。

ポケトーク導入レポート 波除神社様の場合

東京・築地にある「波除神社」の縁起は、このあたり一帯が海から陸地へと新田開発により埋め立てられた江戸時代にまでさかのぼります。ある夜、海面を漂う光を見つけて引き上げると、それは稲荷大神の御神体。以来、地域でお祀りしてきました。およそ350年の歴史ある波除神社に、外国人観光客が多く訪れるようになったのは10年ほど前から。ここ5〜6年は顕著に増え、参拝方法、お守りの頂き方など、神社ならではの言葉遣いや作法を説明するのに大変苦労されてきました。そこへ導入されたポケトークはまさに救いの神。どんな場面でどのように活用され、結果をどう評価されているのか、また、神社にとっての存在意義などを伺いました。

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(左から)築地 波除神社 巫女 金山玲奈さん、築地 波除神社 禰宜 鈴木淑人さん、築地 波除神社 権禰宜 平山甲之介さん

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気づくと境内には外国人の方ばかり。多くの神社が困っている外国語対応の問題解決にいち早く乗り出す。

外国からの参拝者はいつから増えましたか?

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20年ほど前までは、外国の方まったくと言っていいほどいませんでした。外国人、日本人を問わず、観光客自体が築地にいなかったんです。築地がいまのような観光地になったのは10年ほど前からでしょうか。市場が小売りを開始し、市場内外のグルメが紹介されるようになってからですね。それから、外国の方も多く見かけるようになりました。ここ5〜6年は、気づくと境内が外国の参拝者でいっぱいになっていることも珍しくなくなりました。外国の方はほとんどが旅行者ですが、日本語ガイドさんがついていないケースも多いんです。そうした方々が授与所に来られたら、どう対処すればいいのか? 巫女の中には英語のできる者もおりますが、レベルはまちまちです。また、英語で説明を書いたプリントも用意しているのですが、英語ができない方もたくさん参拝に来られます。そこで、発売当初から気になっていたポケトークを導入してみることにしました。

普段、どのくらいの外国人が来られますか?

一日20~30人ほどでしょうか。もっと多く感じる日もあります。曜日で言うと、土曜日が多いですね。

平均すると、日本人と外国人が半々という印象です。

ご参拝が多いのは午前中から正午前後ですね。移転しましたが、築地市場や場外のオープン時間と重なっているのでだと思います。

社務所での対応は朝9時から夕方5時までなのですが、境内は基本的にいつでも参拝自由なので、早朝や夜に来られる方もいらっしゃいます。

どの国の方が多いですか?

よく使うのは英語ですが、英語圏の方とは限らないんです。例えばフランス、イタリア、ドイツの方も、まずは英語で話しかけてこられるので、本当のところどちらの国の方なのかは把握できていないんです。ちょうど昨日もポケトークを使う機会があって、最初は英語でやり取りしたのですが、流暢ではないため翻訳がうまくいかず、「どちらの国ですか?」とお聞きしたらフランスでした。そこからは、フランス語に切り替えることでご対応することができたのですが。英語の次に使用頻度が高いのは、中国語、タイ語ですね。

ポケトーク導入以前の際のお困りごとは?

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例えばお守りについて「これは何ですか?」と質問されたら、先ほどお話したプリントをお見せして読んでもらっていたのですが、それではそれぞれのお守りのご利益までは説明しきれませんでした。また、プリントを見て何か尋ねられても、お相手がどんな疑問を持たれたのかが理解できないので、いろいろプリントはあってもどれをお見せしたらいいかがわからない状況でした。英語が話せる巫女もいますが、巫女の本業は学生ですので、いつもいるわけではなく困っていました。

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私がご本殿でご祈願の練習をしていた時のことなのですが、こちらが正座の形から拝をするので、この姿を見た外国の方がお賽銭箱の前で真似をされて土下座のようになってしまい…。神職がやっているのだから正しい作法なのだろうと思われたのかもしれません。これも説明ができず困ってしまいました。ご本殿の賽銭箱の横には、ご参拝の作法を英語とイラストで示した看板を設置していますが、私も英語が苦手なので…。

最近ようやく、私を含め40歳までの若い神主の会が中心になって、神社でよく使われるフレーズを英訳したシートを作成して配布されたのですが、どちらの神社でも困っているのだと思います。

日本人相手でも難しい説明が、ポケトークなら外国人に納得いただくことができた。

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どんな説明を求められることが多いのですか?

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やはりお守りやお札について、たくさん種類があるので「これは何にいいのですか?」といったご質問が多いですね。「どこに飾ればいいですか?」といったご質問もあります。

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当神社には特殊なお守りがあるんです。「干支めぐり守り」というもので、緑、黄、赤、ピンクから一色を選び、選んだ色の玉を2つ手に取って、そのうち一つは境内にある自分の干支の灯篭に据えた器に納め、もう一つは守り袋に入れて持ち帰っていただくのです。緑は健康、黄は金運、赤は成功・合格祈願、ピンクは恋愛にご利益があります。このご説明は日本人が相手でも難しいのですが、外国語となるとお手上げでした。また、絵馬も特殊でして、通常は神社に吊るしますが、当社の絵馬はお持ち帰りいただくんです。外国人参拝者でも絵馬のことはご存じの方が多く、よく「どこに飾ればいいの?」と尋ねられるのですがお答えできず困っていました。さらに近年、外国の方に御朱印が人気なんです。御朱印も当社には2種類あるということで、いろいろとご説明できないことが多く、ジレンマは強かったですね。

説明できない申し訳なさもありますが、まずは、お相手が何を聞いておられるかわからないという点が心苦しいんです。何度も聞かれて、あれも違う、これも違う、「もういいわ」と帰られてしまった時は本当にもどかしくて。

おみくじは、当社では日本語のみのおみくじのほかに、日本語・中国語・英語・韓国語の4か国語で書かれたおみくじもあります。それでも、最近増えてきたタイの方には対応しきれていませんでしたが、先日、タイの方にポケトークでおみくじに書かれていることを説明差し上げました。大変に喜んでおられましたね。

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おみくじの内容については、例えば健康運や金運が良い・悪いだけでなく、ポケトークがあることで「支出を抑えよ」「ほしいものがあれば待たれよ」といったニュアンスまでお伝えすることができるようになりました。

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おみくじは最後、「どうしたらいいですか?」と必ず聞かれるのですが、「折り畳んで木に結んでください、持ち帰ってもいいですよ」というような少し長文になっても、ポケトークならスムーズに通じるのが良いですね。

ポケトークは日本語力が試される!? 特有の専門用語と向き合う良い機会に。

ポケトークを導入される際に評価された点とは?

まず長文でも正しく翻訳できる点です。初めてポケトークを使った際に翻訳したのは、「このお札は目線より高いところに、南に向けて飾ってください」という内容でしたが、正しく翻訳してくれて驚きました。外国の方に「お札はどう飾ればいいですか?」と聞かれることは多いのですが、インターネットの翻訳サービスなどでは、こういった長文では意味不明な文章になってしまうんです。

神社ならではの用語も多くあるので、ますます翻訳は難しくなりますね。

そうなんです。そこで一つ気づいたのが、「神主の常識は、世間の非常識」だということです。普段使っているわれわれの言葉は専門用語なので、翻訳のしようがない。外国の方に伝えるには、なるべく平易な日本語に直す必要があります。ポケトークを使うようになって、神職や巫女さんには、「なるべく簡単な言葉を使おう」と言っています

例えばどんな言葉の翻訳が難しいのでしょう?

「祈願」「参拝」「初穂料」「境内」「本殿」「灯篭」「神輿」や、「お納めください」といった独特の言い回しですね。初穂料などは、日本人でもわからない方が多いのではないでしょうか。そこは「料金」や「支払い」と言い換えれば翻訳することができます。こうなると逆に、「ポケトークは日本語力が試されるね」と言っています。

実際にポケトークを使った際のエピソードを教えていただけますか?

中国から来られた20代くらいの若いカップルの方から「干支めぐり守り」のご説明を求められました。中国の方は「干支」自体は理解できます。しかし、なぜ同じ色を2つとるのかが疑問だったようで、ポケトークで「一つは神様にお願いしてここに残し、一つはご自分の身に着けてお守りにします」とご説明したら、うまく翻訳されてご納得いただけました。なかなか難しい説明をご理解いただけたので驚きました。

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中国以外の外国の方には、まず「干支」の説明が必要になるのですが、ポケトークで「自分の生まれた年によって動物が決まっています」とご説明したら、ご理解いただけました。せっかく興味を持って参拝に来てくださった方にはぜひ笑顔で帰っていただきたいですし、来て良かったと思われる対応がポケトークでできるようになって、大変うれしいです。

参拝作法やお守りについてご説明する場面はもちろん、最近「このポケトークがほしい」と言われることが多いのが印象に残っています(笑)。昨日もですが、アメリカから来られた40代くらいの男性に、購入したいと言われたのですが、「有楽町の大きな電気店で販売していて、神社から右手の大通りに出て東京駅行きのバスに乗れば行ける」というようなことまでお伝えすることができました。男性は、「ありがとう、今から買いに行ってきます」と有楽町に向かわれました。

神社への参拝を日本の伝統・文化の体験として伝えるために、翻訳ツールは必要だと思う。

外国の方に、「神社に参拝する」という行為の意味は伝わっているのでしょうか?

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外国の方にも、ここは宗教施設であるということは認識されていると思います。清浄な場所で、参拝するところだからこそ、ちゃんとした参拝作法を知りたいと思って作法を質問されるのです。

神社特有の言葉も翻訳できるようになればと思われますか?

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実は、日本の神社で使っている言葉にピッタリ当てはまる外国語は、例えば英英辞典を引いてもなかなかないんです。ですからそこまでは求めませんが、ただ、神社は日本の伝統や文化を外国の方に紹介する役割を担っていると思います。そこを考慮したフレーズは翻訳できるといいですね。例えば当社の「つきじ獅子祭り」では、1トンもの獅子頭を神輿に担いで練り歩きますが、英語に直訳すると「ライオン・ヘッド・フェスティバル」となってしまいます。神輿も「ポータブル・シュライン」……もうちょっと、日本の文化を紹介するという意義を含んだ翻訳があるといいですね。根本的なことですが、日本の神道の神を「ゴッド」と直訳されるのも違うと感じています。仏教のお寺は世界的に認知されていますが、神道は日本独特文化なので、まだ広まっていないのが現状です。これは先輩神主たちもよく話すのですが、学術的な解説のための直訳ではなく、外国語がわかる神主や、ハワイの出雲大社の分院など外国の神主の意見を聞いて進めていっていただければいいなと思います。

神社の存在や作法を日本文化として紹介するためにも、適切な翻訳は必要ですね。

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神社への参拝を、日本の文化として体験したいという外国の方は多いと思います。体験は記憶に残ります。ポケトークできちんと作法のご案内ができれば、参拝は素晴らしい旅の思い出になりますし、作法を覚えていただくことでほかの神社も訪ねてみようと日本文化の体験が広がっていくと思います。いつかご祈祷も、ポケトークを通じて外国人参拝者にも体験いただけるようになればと考えています。お参りだけでなくご祈祷も体験いただくことで、さらに日本文化を発信していく、その先駆けになりたいですね。

●よく使うフレーズ
「ご本殿の中にはお賽銭を払っても入れません(お金を払っていただいても建物の中には入れません)」
  英語:Even if you pay the money, you can not get in the building
 中国語:即使付钱,也不能进到建筑物里。

「写真を撮っていいですよ」
  英語:You can take a picture
 中国語:可以拍照。

「おみくじをするにはお金を入れてから、一つ取ってください」
  英語:Please put in money and take one to make a fortune
 中国語:要签神签的话,请放入钱之后再取一份。

「ここにはトイレはありません、トイレの場所を示した地図はそちらにあります」
英語:There is no toilet here There is a map showing the location of the toilet
中国語:这里没有厕所,表示厕所位置的地图在那边。

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