伝統工芸の魅力を相手の言語で伝えて購買意欲UP

京都千年の歴史に育まれた手業を、常設展示やイベント、制作体験を通じて一堂に紹介している京都伝統産業ミュージアム。1977年の開館後、2020年3月に京都伝統産業ふれあい館から現在の名称にリニューアルし、京都に息づく産業を通して、国内外含めて広く伝統産業の振興に取り組まれてきました。

アフターコロナに突入してから、来場客の7〜8割は外国人観光客で常時賑わっています。英語をはじめ、フランス語、中国語、韓国語など外国語対応可能なスタッフもいますが、今回ポケトークを8台導入され、様々な良い結果を産んでいるそうです。

本記事では、フロア接客担当の江良様とショップ接客担当の村上様に、ポケトークの導入効果についてお話を伺いました。

──京都市伝統産業の繊細な魅力を伝えられる「頼れる相棒」ポケトークはどういった時に使っていますか?

日本の伝統技術が施された展示品の材料や原料、それらが実際に使用されていた時代の文化背景など、主に少し込み入った日本文化・工芸品の話をするときに使っています。

当館ではチケット販売や館内案内については業務フローが決まっているものも多いです。我々スタッフからお客様へ積極的に話しかけることはありません。基本的にはお客様からご質問いただく内容にお答えしています。

それでも稀に「この美術館はどういった場所なのですか?」「⚪︎⚪︎という工芸品はどのように使われていたんですか?」など、日本の伝統産業の歴史や、古くから受け継がれてきた伝統的な技術や技法について詳しく聞かれることがあり、正直自分の英語の言い回しを気にしている余裕はありません。

そんな時にポケトークを使えば、どんな言葉であっても正しい情報を伝えることだけに専念できるので、すでに英語が話せるスタッフの間でも「心の安定剤」として重宝しています。

京都の伝統産業74品目を、素材・道具、作品や活動の紹介、職人による実演などを通して学べるエリア
京都の伝統産業74品目を、素材・道具、作品や活動の紹介、職人による実演などを通して学べるエリア

あとは当館のスタッフで英語対応ができても、お客様側が英語をスムーズに話せるとは限らないので、対応言語数(※)が多いことも非常に助かっています。

(※)74言語で音声・テキスト、11言語ではテキストのみの合計85言語に対応(2023年6月現在)

当館では手描友禅染 「挿友禅」、金箔貼り、絞り染め、和ろうそくの絵付けなど、京都市の伝統産業に携わる職人さんが出向いて、匠の技を直接学べる「実演ブース」があり、世界各国から様々なお客様がいらっしゃいます。

歴史と伝統に培われたものづくりの技術を、文化的背景も含めながらレクチャーする必要があるので、ポケトークと自分たちの会話を織り交ぜてコミュニケーション量を増やすことで、丁寧な接客ができているなと感じています。

<京都市の伝統産業74品目>

西陣織、京鹿の子絞、京友禅、京小紋、京くみひも、京繡、京黒紋付染、京房ひも・撚ひも、京仏壇、京仏具、京漆器 、京指物、京焼・清水焼、京扇子、京うちわ、京石工芸品、京人形、京表具、京陶人形、京都の金属工芸品、京象嵌、京刃物、京の神祇装束調度品、京銘竹、京の色紙短冊和本帖、北山丸太、京版画、京袋物、京すだれ、京印章、工芸菓子、京竹工芸、造園、清酒、薫香、伝統建築、額看板、菓子木型、かつら、京金網、唐紙、かるた、きせる、京瓦、京真田紐、京足袋、京つげぐし、京葛籠、京丸うちわ、京弓、京和傘、截金、嵯峨面、尺八、三味線、調べ緒、茶筒、提燈、念珠玉、能面、花かんざし、帆布製カバン、伏見人形、邦楽器弦、矢、結納飾・水引工芸、和蝋燭、珠数、京菓子、京漬物、京料理、京こま、京たたみ、京七宝

※体験詳細についてはこちらをご覧ください。

──ポケトーク導入によって印象的だったエピソードを教えてください。

お客様からお礼を言っていただく回数が格段に増えました。

当館のような美術館でお客様が話しかけてくださる時というのは大抵の場合、展示の詳細、お手洗いの場所、周辺施設について......何かしらの疑問を持たれている時です。そのため会話の課題解決力が求められますし、返答にご満足いただけたか否かが、顕著に表情に現れると思っています。

今までは私たちスタッフへ聞かれた質問に対して、最低限の情報を伝えて終わる一方通行でした。しかしポケトークを導入してからは「せっかく導入したのだからもっと頼ろう」という気持ちで、英語ができるスタッフでもあえてポケトークを使って正確に、丁寧に、より詳しくお伝えするようにしてみたんです。

そうすると普段私たちが英語で使っていなかった表現だったり、知っていてもパッと口から出てこなかった英単語が瞬時に翻訳されて音声で流れるので、お客様から追加の質問をいただいたり、感想を伝えてくださったりと、会話のキャッチボールが何往復か増えるようになりました。ご満足いただいたことは表情からも明らかで、色々な国の言葉で「ありがとう」と目を見て言ってくださるようになりました。

ポケトークがあると、いざという時にサッと取り出して使えるので、言葉の壁について不安を抱えながら接客することが一切ありません。自信がなくて避けてしまいがちな単語表現にも、「言えなくてもポケトークがカバーしてくれるからいいか」という前向きな気持ちになれるのであらゆる言語で活用させてもらっています。私たちスタッフにとってはもはや「もしもの時に頼れる存在」となり、精神的にスタッフの大きな支えとなっています。

──伝統工芸品のショップではお客様の購買意欲UPに貢献

──普段どのようにポケトークを使っていますか?

お土産コーナー(京都伝統産業ミュージアム内ショップ)では常時スタッフ4名体制で対応しており、ポケトークはレジに2台置いて毎日使っています。

アメリカ、フランス、スペイン、イタリア、ポーランド、イスラエルなど、ヨーロッパを中心に様々な国からお客様がいらっしゃり、ショップに並んでいる工芸品の使い道や扱い方、免税手続きなどについて話をします。「英語できますか?」と話しかけられるので、「No(できない)だけど、ポケトークがあるので」と言って取り出すと、皆様最初は興味津々に見つめてくださり、その後すぐに外国語が翻訳されるととても驚かれますね。

お土産コーナーにて、工芸品の説明をするスタッフと、驚きの表情を見せる観光客
お土産コーナーにて、工芸品の説明をするスタッフと、驚きの表情を見せる観光客

──印象的だったエピソードを教えてください。

沢山あるのですが、最近はスペインからお客様がいらっしゃって、良い香りのお土産を探しているということでルームフレグランスをご覧いただいていたんです。そこで香りをお楽しみいただくだけでなく、「ひのきには浄化作用が含まれているんですよ」などちょっとした豆知識をお伝えさせていただいたところ、とてもお喜びになられて、並んでいる全種類をご購入されました。

ただ手にとって見るだけではなくて、工芸品に隠された裏話やこだわりを伝えると「欲しいな」「買おうかな」という気持ちが大きくなっていくようです。

予算以上に買っちゃったわといった嬉しい悲鳴も実際に多く耳にします。ポケトークがあることで購買行動に繋がっていると実感しています。

──これからもポケトークを活用していきたいですか?

はい、もちろんです。私は元々英語に苦手意識があって、目を見て話されると頭が真っ白になってしまっていたんですが、ポケトークを持っていると一度聞いてわからなくても頼ればいいんだという安心感があります。

スペイン語で接客したあとは”Gracias”、フランス語なら”Merci”といった具合に「ありがとう」「さようなら」など各言語の簡単な挨拶を返せるくらい、落ち着いて、かつ外国語を楽しんで会話できるようになりました。

これからもポケトークを活用し続け、京都市の伝統工芸を世界に広める一助となりたいと思っています。