授業をリアルタイムに翻訳 ー 外国人児童生徒の母語支援で安心・安全・高品質な教育を提供

教育機関 神戸市教育委員会様の場合

近年、外国人児童生徒が増加する中、多様な言語や文化背景を持つ児童生徒に対するサポートが重要視されています。

兵庫県神戸市では今年度、市内の学校に通う外国人児童生徒数が1,700人を超えました。こうした教育現場のグローバル化を受け、神戸市教育委員会では新たに、日本語指導が必要な児童生徒に対する学習支援の一環として「ポケトーク for スクール」を活用しています。

「ポケトーク for スクール」は、リアルタイムに音声を翻訳し、文字で表示する機能を提供する「ポケトークライブ通訳」と、複数人数に同時に翻訳結果を届けることのできる「ポケトーク カンファレンス」を応用した新サービスで、教育現場に適したかたちで提供を開始したオンラインツールです。今回は、神戸市教育委員会事務局 学校教育課 ことば日本語サポートひろばの牧瀬指導主事にお話を伺いました。

ー 「ポケトーク for スクール」導入の背景を教えてください。

牧瀬主事:神戸市教育委員会では、日本語指導が必要な外国人児童生徒に対して「母語支援員」を派遣し、学校生活への早期適応と円滑なコミュニケーションを図っています(※)。

日本語指導が必要なケースとは、日本語での学校生活や授業に影響を及ぼしている状態を指します。具体的には、生活に必要な基本的な日本語(生活言語)と、授業を理解するための高度な日本語(学習言語)の両方が不足している場合です。

来日して1ヶ月未満の児童生徒には週5回、半年までは週3回、2年までは週1回程度、「母語支援員」がそばについて学校生活や授業をサポートしています。

子ども多文化共生サポーター制度による

しかし、近年新たに来日し転入する外国人児童生徒が増加し、母語支援員の不在時に、支援が十分に行き届かない状況が課題となってしていました。そこで今年度から、どんな時間帯でも日本語が分からない児童生徒の学習環境を充実させるために、「ポケトーク for スクール」を導入することにしました。

ー 日本語指導が必要な児童生徒の割合はどれくらいですか?

牧瀬主事:今年度の5月1日時点で、神戸市立学校に通う外国籍の児童生徒は1,707人、うち657人は日本語でのコミュニケーション力などが十分ではありません。つまり、約3人に1人以上が日本語指導を必要としている状況です。

入管法改正により、日本で働く外国人が増え、生活の基盤を築いた方たちが家族を呼び寄せるケースが全国的に増えています。彼らが日本で安心安全な生活を送るためにも、母語支援や日本語指導のニーズは今後も続くものと思われます。

ー 現在はどのように「ポケトーク for スクール」を使用していますか?

牧瀬主事:神戸市立学校に転入して4ヶ月に満たない児童生徒を対象とし、25アカウントを利用しています。

児童生徒は、授業中に教員が話している日本語を母語で理解するために、PC端末を机にき、端末に表示される「ポケトーク」の画面で母語に翻訳された内容を確認しながら授業を進めています。

従来のポケトークでは話した内容を聞き取って翻訳するまでにタイムラグがありましたが、「ポケトーク for スクール」は瞬時に児童生徒の母語に翻訳できるため、クラスの誰一人取り残さないのが最大のメリットです。

児童生徒の、安心安全な学校生活のために、公平かつ質の高い教育を提供できています。

翻訳精度が高く、第三者の思考が介在しない先生の生の声をそのまま母語で共有できるので、日本語の勉強として特定の児童生徒が一日中ポケトークを利用しているケースも珍しくありません。

【生徒側】机の上に教科書とポケトークライブ通訳を並べて授業を聞く

【先生側】胸元に装着されたBluetooth端末が音声を収集し、生徒の手元にある「ポケトーク for スクール」で翻訳内容が即時表示される

牧瀬主事:児童生徒側の変化で印象的だったのは、やはり授業態度の変化です。

今までは先生が日本語で授業を行うと、日本語がわからない児童生徒は、うつむいてしまったり、積極的に参加できなかったりしていました。母語支援員がいる時間も限られており、常にサポートを受けられるわけではありません。そのため、支援がない時には児童生徒は自力で勉強しなければならない状況でした。

一方で「ポケトーク for スクール」があれば、常に母国語とともに授業を受けることができます。周りの友だちとの時差はほぼなく先生の話している内容を理解することができます。以前と比べて、彼らの授業に対する取り組み方や積極性が圧倒的に改善されました。これは児童生徒にも教員にも大きなメリットです。

ー 導入決定までの意思決定はどのように行われたのですか?

牧瀬主事:いくつかのサービスを検討する中で、今年に入ってから神戸市立学校で「ポケトーク for スクール」をトライアル利用したところ、アンケートやヒアリングを通じて、児童生徒や教員からの評判が非常に良かったのが決め手です。

「授業内容が以前よりも理解しやすくなった」「同時翻訳のおかげで授業がスムーズに進行できるようになった」といった声が多くありました。この結果を踏まえて、言葉の壁をなくし、母語支援員がいない時でも児童生徒の学習支援を充実させるために必要不可欠だと判断しました。

私自身も管理職研修や日本語指導研修の中で、先生方に向けて、実際に「ポケトーク for スクール」を使った実演を行いましたが、非常に便利でしたね。実演前には、で英語、アラビア語、ウルドゥー語などの言語をテストしました。ゆっくり、はきはきと、「やさしい日本語」を意識して話すと、翻訳精度がどんどんよくなりました。

ー 今後「ポケトーク for スクール」をどのように活用されますか?

牧瀬主事:まず授業外の利用シーンとして、休み時間中のコミュニケーションを想定しています。例えば日本語支援が必要な児童生徒が教員や友達に話しかけたい時、その児童生徒が端末を持って教員や友達のところに行き、母語で話しかけると、ポケトークが日本語に翻訳してくれ教員や友達が即座に理解できます。

また、学校での懇談会や中学校の三者面談での活用も考えています。懇談会は保護者と学校の先生が会って話をする場であり、三者面談では保護者、生徒、そして学校の教員が一緒に話し合います。

このように信頼関係を築くうえで重要な場面で「言葉の壁」を感じることなくコミュニケーションが取れることは非常に大切ですし、児童生徒にも保護者のみなさんにも、日本での生活に安心感を持ってもらいたいと思っています。

ちなみに、神戸市の外国籍の児童生徒1,707名のうち約800名(約43%)が中国籍です。また、希少言語を母語とするご家庭も多くあります。「ポケトーク for スクール」は74言語(※)に対応しており、我々が受け入れている全ての児童生徒に対応できているのが嬉しいポイントです。今後もぜひ様々な場面で活用していきたいと思っています。

※取材時時点

「ポケトーク for スクール」には「ポケトーク ライブ通訳」の技術を応用しています。

「ポケトーク ライブ通訳」は、リアルタイムでの正確な翻訳を提供し、
ビジネス会議や教育現場での多言語対応を強力にサポートします。

  • 聞き逃しも後から確認できて安心
  • 終了後は翻訳データをダウロード

※「ポケトーク ライブ通訳」は、双方向翻訳機能と自動言語認識機能が備わりアップデートされた新モデルです。

2024/11/01公開