接客効率UP、店舗売上は3倍に。
外国人観光客への接客の不安は限りなくゼロへ
京都府伏見区にて、伝統的な和蝋燭(わろうそく)、京蝋燭、絵蝋燭などの製造・販売をしている有限会社中村ローソク(1887年創業)。インバウンドの再活性化と外国人観光客の増加に伴いポケトークを導入しました。
もともと外国人観光客が多く、身振り手振りで接客をしていましたが、お客さんも英語を話せるとは限らず「言葉の壁」を感じ、接客を苦手とする従業員もいたそうです。ポケトーク導入後の今は、世界中どの国から来たお客さんでも全員が接客できる体制を敷くことができた他、店舗やワークショップでの接客効率の改善、売り上げUPといった成果が現れています。今回は、4代目(※)代表の田川広一さんにお話を伺いました。
(※)分家したため本家としては11代目
──御社の事業について教えてください
京都の伏見区で、和蝋燭の製造・販売をメインに行っています。店舗だけでなく、蝋燭を作っている工房を訪れてくださるお客様もいます。
他にもイベント出展やワークショップ開催、SNSでの文化発信(Instagram)なども行っています。
──ポケトークを導入した理由はなんですか?
ポケトークは以前から「AI翻訳機」として知っていました。ただ、今まで携帯の翻訳アプリを駆使しても、トンチンカンな直訳に満足できないことがあり、ツールの導入には懐疑的でした。
それが実際に使わせていただいて、翻訳精度が高いうえに使い勝手も良く、初めてお客さんの前で使った時に「これは使える!」と衝撃を受けまして、すぐ購入を決意しました。
今は店舗に1台と、イベントなどの催事用に1台を、弊社の従業員が携帯するようにしています。
──ポケトーク導入前はどういった課題を感じていましたか?
シンプルに、接客における言語の壁ですね。
うちの工房には世界中からお客さんが訪れてくれて、海外メディアを見たという声も多いです。週に1組は工房見学に訪れてくれる外国人のお客さんもいます。
和蝋燭を知った上で買いに来てくださる方も多いですが、やっぱり店舗にいらっしゃると種類も豊富ですし、燭台など関連商品もあったりして、そこでより興味を持ってくださるのでしょうね。色々聞かれるのですが、まぁ全てジェスチャーと勢いで対応していましたね。
海外からのお客さんは皆んな和蝋燭に興味津々で、「これ何?」「これは何でできてるの?」って次々に聞いてくれるんですよ。なので我々も「こういうのがあってね」って頑張って伝えようとするんですが、やっぱり知っている英単語を並べて説明するのがやっとでした。
さらにお客さんも英語の母語話者でない場合は、一生懸命に話しかけてくれても、こちらが正しく理解できないことがあるんです。和蝋燭と言ってもさまざまな種類があるので、どういう用途で使いたいのか、どんな見た目・材料のものが欲しいのかによって、おすすめできる商品は異なります。それが相手も英語に苦手意識を感じていると、途中で会話が途切れてしまう。
お互い不完全燃焼で終わってしまっていると感じていました。
──ポケトークの導入してから事業面でどういったメリットを感じていますか?
1つは、接客効率の改善です。
やっぱり海外のお客さんに話しかけられたら、言葉の苦手意識から逃げ出したくなる心理が働いてしまう従業員もいるんですよね。海外の人に抵抗がない人だと、積極的に接客できると思うのですが、うちでは全従業員がそういう訳ではない。
それがポケトークを持っていると、何にも変え難い安心感が生まれます。ポケトークがあれば「もう何語が来ても大丈夫だ」という気持ちになれるので、接客で感じているメリットは大きいですよ。ポケトーク導入前は、伝わっている手応えが20%くらいだったのに対し、ポケトークがあると言いたいことの80%以上は安定して伝わっている感覚があります。
こちらもその場にいる従業員にどんどん誘導できる。外国語がわかりませんなんて言わせないですよ(笑)「ちょっと待って」とジェスチャーで表現して、あとは機械に向けて日本語で話すだけ。だから誰でも即座にお客さんに対応することができます。ロシアからのお客さんにはロシア語で、ドイツからのお客さんにはドイツ語で会話できる。
ついこの間は、台湾と中国本土からのお客さんが2人でいらっしゃっていて、2人とも中国語は話すけど、言葉としては全然違うじゃないですか。それをポケトーク使ったら「合ってる!」って感動していました。
2つ目は、良い接客ができるようになったことによる売上向上です。
以前ドイツからお客さんがいらっしゃったとき、トータル1万円くらいの蝋燭を購入されていました。そしてその方は、蝋燭の10倍くらいの値段のする燭台(ろうそく立て)にも興味を持ってくださったんです。今までだったら、英語と身振り手振りでなんとか説明しようとしていましたが、正直3割くらいしか伝えたいことが伝えられませんでした。しかしポケトークがあると、詳しい材料の話から文化にまつわることまで、なんでも平気で会話できてしまうので楽なんです。結局その方は、もともと購入する予定だった商品に加えて、燭台も購入していかれました。
目の前で蝋燭を作っている職人から直接、本人の言葉で説明をされると説得性が増すんでしょうね。特に海外の方って、職人に対してすごい尊敬の目で見てくださるので。
全体でならして売上は以前の3倍に増えたと思っています。
──ポケトークを使ってどんな未来を実現したいですか?
「京都に来たら、言葉に困らない」
そんな世界を作っていきたいです。
和蝋燭って、あまりよく知らない人は「キャンドル」と同じものだと思ってるんですが、実は「蝋燭」と「キャンドル」は作り方も使い方も全く異なります。
和蝋燭の明かりは、昔の日本の生活には欠かせないものでした。大きくゆらゆらと揺れる和蝋燭の炎には、それ自体に意思が宿っているかのような神秘性や情緒があります。中が空洞芯になっている和蝋燭は、空気が蝋燭の中を流れ、その流れによって炎を揺らめかせるんです。だから屏風や、金箔を貼ったお茶室で使ったりしたときに、光が乱反射して美しいんです。日本の暮らしに根付いたそういった背景があるんですよね。
和蝋燭を買うとか、寺を訪れるといった行動だけではなくて、そういった伝統産業の文脈と共に広めていきたい。
京都で言葉が通じていい経験をしたら、京都の伝統産業が本当に広がっていくと思うんです。そこから海外にもっと日本の伝統や文化を知ってもらったら、京都いい場所、日本いい国ってなっていくじゃないですか。その先駆け人となりたいですね。