厳密でかつ柔和な対応が求められる医療機関。
ポケトークで外国人患者の不安も限りなくゼロへ
医療、介護、保育といった生活に密着したサービスを提供する株式会社ニチイ学館では、医療機関への訪日および在日外国人の増加を鑑み2020年5月よりポケトークを導入されました。その中から、今回は同社が医療事務業務を受託する成田赤十字病院での活用事例を取材。成田国際空港に近い場所柄、多くの外国人患者が訪れています。語学が堪能なスタッフを配置する国際診療支援室を立ち上げられたり、指差しシートや翻訳用タブレットを導入してこられましたが、英語や中国語以外を話す方も年々増加しており対応が難しかったと言います。ポケトークの導入により、どのように改善されたのか、お話を伺いました。
成田空港に近接するという土地柄、 何十年も前から外国人患者に対応
──まずニチイ学館と成田赤十字病院の関係について伺えますか?
当社は全国約8,000件の医療機関さまにご契約をいただいており、医療機関の顔とも言える受付や会計窓口業務、診療報酬請求業務など、さまざまな業務を請け負っています。成田赤十字病院さまにおいても長年ご契約をいただいており、窓口業務を中心に現在は72名のスタッフが常駐し、患者さまに対応しています。成田赤十字病院さまの病院の基本理念である『患者さん中心の「こころあたたかい医療」』の提供を目指し、病院の一員として善処しております。
わたしはニチイ学館のスタッフとして成田赤十字病院に勤めはじめて16年目になります。業務としては、入口にある総合案内、初診受付、会計案内での患者さまの対応を行なっています。
わたしは婦人科を担当しています。現在7年目ですが、それ以前も数年おりましたので、十数年お世話になっています。
──外国人患者はいつごろから増加してきたのでしょう?
具体的なデータを取り始めたのはここ4〜5年なのでいつごろから増加してきたかはわかりません。ただ成田空港が近いため、土地柄近隣に外国人居住者の方も多く、何十年も前から来院されていたという来院履歴が残っていました。
──ポケトーク導入以前は、どのように対応されていたのでしょうか?
成田赤十字病院さまで用意された翻訳用のタブレットがありました。医療機関向けのツールで、翻訳者との三者間通話対応と機械翻訳ができました。タブレットでは無料のWEB翻訳サービスもよく利用していたのですが、毎回翻訳したい内容を打ち込む必要があり時間がかかり、間違って翻訳されてしまうことも多くて結局、国際診療支援室(以下、国際部)の鈴木さんをお呼びして通訳をお願いするという状態でした。
国際部は、赤十字病院として国際救援要員の育成や派遣業務がありますが、外国人の患者さまのための院内整備や、言葉が通じず現場が困っている時などのサポートにも対応しているんです。受付の場合もあれば病棟の場合もあります。受付で患者さまの容態を伺う際など、比較的簡単なやり取りは機械翻訳を使用しますが、診療内容やIC(インフォームド・コンセント=医師と患者の間で充分に情報を共有した上での合意)など間違えてはならない場面では、三者間通話による通訳サービスを利用しています。
希少言語も網羅している点を高評価。 どこの国の方が来ても対応できる
──外国人患者への対応で特にお困りになっていたのはどんなことでしょうか?
現在、当社が請け負っている業務は平日のみなのですが、以前休日業務を請け負っていた際は国際部の方がいないので困っていました。
外国の方がいらっしゃると、それだけでハッと緊張を感じていました。いまは、ポケトークがあるというだけでずいぶん気が楽です。すぐに国際部にヘルプを出さずに、まず自分でできるだけ対応してみようとチャレンジする気持ちが出てきています。
──「あのときもポケトークがあったら良かったのに」と思い出される場面はありますか?
オーストラリアご出身の入院患者さまのご家族が受付に訪ねてこられて、何か質問されているのですが、タブレットを使ってみても一向にわからないということがあったんです。たまたま、英語ができる成田空港のクルーの方がほかの患者さまの付き添いで来院されており、見かねて通訳を買って出てくださいました。すると「この近くに温泉があると聞いたんだけど、どこですか?」というご質問だったのです。普段からよく耳にする受付に必要な英語は多少聞き取れるのですが、まさか温泉のことだったとは…。
病棟を担当していたころ、やはりご家族や知人の方からのお問い合わせに苦労しました。多くは「知人のこの人は入院しているか」「どんな具合か」「どんな治療をしているのか」などですが、タブレットの機械翻訳では意思疎通ができない場合もあり、国際部に応対をお願いすることもしばしばで常にもどかしさを感じていました。
──どのような言語の方がよく来院されているのですか?
この取材に際して、成田赤十字病院で当社スタッフが使用しているポケトークの言語別の翻訳回数を調べてみたのですが、英語以外で一番多いのがタイ語でした。次いでベトナム語、中国語(簡体字)、ペルシャ語、英語、ギリシャ語、ネパール語という感じでした。恐らく英語は国際部の皆さんにもご支援頂きながら対応しているため翻訳回数が比較的少ないのだと思いますが、英語以外の言語を話す患者さまがいかに多いか、今回よくわかりました。
タイ語やベトナム語など、英語以外の言語になると国際部といえども正直太刀打ちできない状況がしばしばあります。
ポケトークによって、「AI」に初めて触れたような感動を覚えた
──新たな翻訳機が必要だと考えられたきっかけは?
われわれニチイ学館のスタッフは、受付や会計窓口という患者さまと直接向き合う機会が非常に多い現場にいます。当社は創業52年ですが、今に比べ少ないものの当初から外国人患者さまの対応で困っているという話はあり、25〜26年前にオリジナルの指差しシートの冊子を作成し、活用していました。昨今、訪日・在留外国人が増加したことから、現場スタッフから「昔あった指差しツールの冊子をリニューアルしてほしい」という声も挙がっていたんです。また、医療機関が医療事務の業者を選定する際は、外国人患者さまへの対応について提案を求められることも増えています。時代によって変化する医療機関のニーズにお応えするために、ポケトークを軸に、「外国人患者対応シートブック(指差しツール)」や「災害時多言語案内ボード」といった当社オリジナルツールの導入とスタッフへの教育を開始しました。それ以前は、スタッフが各々のスマートフォンに、無料のAI翻訳アプリをダウンロードして使っている状況だったんです。これは現場スタッフが自分達で考え、工夫した結果ではありますが、会社として業務の質を担保するため、翻訳専用の端末の導入は急務と認識していました。
──ポケトークを初めて使ったときの印象はどうでしたか
「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でポケトークが紹介されたのをたまたま見ていたのですが、番組の終わりに村上龍さんが「AIの音声を耳にして、AIの可能性をはじめて実感した」という言葉を残されています。この言葉が強く印象に残ると共に深く共感しました。また、当時の上司が中国語で、私は英語でいろいろな言葉を話しかけてみましたが、その度に驚きとワクワクがあったことを覚えています。他社のツールとも比較したのですが、翻訳スピードが速くて精度も高く、直感的に操作しやすい点は断トツに勝りました。また、言語数が多いことが決定的な判断材料になりました。希少言語になると、他のツールや電話通訳サービスでは手も足も出なくなります。ポケトークは82言語にも対応しているので、希少言語も網羅されていますからスタッフも安心感があると思います。
――ポケトークはどのように配置されているのですか?
会社からは2台整備されていまして、総合受付(初診)と婦人科に置いています。導入時には、スタッフ間で使用方法のミーティングをしましたが、問題なく活用できています。スタッフの全員が、「ポケトークはいままで使ってきた翻訳機の中で一番」と言っていますね。
業務とは関係ないところで「こんにちは」をいろいろな言語に翻訳してみたり、楽しみながら使いこなせるようにそれぞれで工夫しています。とにかく、安心感が違います。
患者さまが、ご自分のスマートフォンの翻訳アプリを使われることも以前はよくあったのですが、ポケトークを導入してからはその回数がかなり減りました。患者さまも違和感なく対応してくださっています。
国際部としても、受付のニチイさんからのヘルプ呼び出しがかなり減っているという実感があります。また、当院でもその利便性などから数台導入しました。
読み取り機能やハンズフリーの新機能も。
病院ならではのポケトーク活用法
──成田赤十字病院さまのポケトークは、新しい「ポケトーク S Plus」なんですね。
はい! 画面が大きくて見やすくなってますよね。書類をスキャンして翻訳ができるのですが、画面が大きいと読み取り範囲も広がるので助かっています。患者さまやご家族がお持ちになる過去の薬の処方箋などを読み取ることもありますが、何語なのか見当がつかなくても自動で言語を特定してくれるので便利です。
ちょうど今朝も、カンボジアの患者さまのご家族の方からお手紙が届いていたのでスキャン機能を使って読んだところ、入院している患者さまを心配されて「どうぞよろしくお願いします」というお手紙でした。そういったお気持ちも伝わるのでうれしいですね。
わたしも今朝一つ気づいたのが、ハンズフリーという新機能です。以前は、話している間ボタンを押し続けなければならず、書類などに記入しながらだと使いづらいこともありましたが、このハンズフリーモードが追加されたことで以前より更に便利になりました!
──ポケトークでよく使うフレーズを教えて頂けますか?
お薬を病院の中で購入するのか、院外で購入するのかというご説明ですね。「処方箋を院内薬局に持っていき、薬を買ってください」「処方箋を院外薬局に持っていき、薬を買ってください」というフレーズはよく使います。また、「お会計は一階の自動精算機でしてください」もよく使います。対面でもご精算いただけるのですが、自動精算機の方が流れがスムーズですし、英語表示もあるのでお勧めしています。
わたしが担当する婦人科は外国の方が比較的多いのですが、「女性の医師をご希望ですか?」というフレーズはよく使います。宗教的に、女性でなければ困るとおっしゃる方もいらっしゃるので。
──ポケトークへの改善要望はありますか?
読み取り機能で翻訳した文書を、プリントアウトできたらいいですね。患者さまにご提示いただいた書類の内容をドクターに伝えたい場合、プリントアウトできれば翻訳結果をそのまま回せますし、ちょっとした伝言を書き込むこともできます。
このご時世なので、抗菌加工されていると病院としてはありがたいですね。院内の方だけでなく、患者さまなどいろいろな人が触れますから。現状は、使ったらその都度、アルコールで拭いて除菌しています。
──成田赤十字病院さまでは(一財)日本医療教育財団のJMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)認証も取得されているんですね。
はい、2018年1月の初認定から、2020年10月に更新審査を受けて2021年2月に正式に更新認定となりました。更新審査の際には、ニチイさんが用意されているポケトークや指差しシート、災害時案内ボードを使用した窓口周りの対応についてサーベイヤーの方にも非常に評価頂き、更新につながったと感謝しています。
今後も国内の医療機関に外国人患者さまが訪れる機会は増加してくると考えています。当社はポケトークや、オリジナルのツール・ノウハウをスタッフの接遇サービスと融合し、受付や会計などの窓口における円滑なコミュニケーションをサポートすることで、患者さまと医療機関、双方の不安緩和・解消を目指してまいります。
よく使うフレーズ
「処方箋を院内薬局に持って行ってください。そこで薬を買ってください」
Take your prescription to the in-hospital pharmacy and buy your medicine there
请把处方拿到院内药店,然后在那里买药。
「処方箋を院外薬局に持って行ってください。そこで薬を買ってください」
Take your prescription to an out-of-hospital pharmacy, buy your medicine there
请把处方拿到院外药局,然后在那里买药。
「一階の自動精算機でお支払いください」
Please pay at the automatic checkout machine on the 1st floor.
请用位于一楼的自动结算机支付。