メニューの翻訳精度が向上。
お客様と対話の機会も広がる
総合レストランチェーンの株式会社サッポロライオン様は、明治32年の創業以来、「銀座ライオン」「ヱビスバー」などあらゆる飲食ブランドを展開・運営しています。
2023年に入ってからは外国人旅行客のインバウンド需要の再興により、多岐ブランドにわたって外国人のお客様数が右肩上がりとなっています。同社は国内外の外国語需要に対応するため、この度ポケトークを24台導入されました。
接客時の外国語コミュニケーションをスムーズにするのが当初の目的でしたが、他にも喜ばしい効果が多々あったといいます。
今回は、ガストロパブ クーパーズ 丸の内二丁目店の店長・船越様と、サッポロライオンの広報担当・横田様に詳しいお話を伺いました。
──ポケトーク導入の背景を教えてください。
今年のはじめに(※)、事業部別の月例会議で「店舗現場での困りごと」が議題に上がり、クーパーズ丸の内二丁目店の課題を相談したのがきっかけです。
※取材時は2023年8月
店舗スタッフは、調理場と、シフトで入っている接客担当を含め10名強ほど。英語が全くできないわけではないけれど、ネイティブスピーカーとの会話には自信のない日本人がほとんどです。
私が店長に就任したのは新型コロナウイルスが日本で流行し始めたころのことで、外国人のお客様数はそこまで多くありませんでした。しかし近年インバウンド需要が再興し、ありがたいことに、外国人のお客様が多い時では1日に20組ほどお見えになります。特にアメリカやヨーロッパからいらっしゃる方がほとんどで、英会話のスピードがものすごく早いんです。
そのため「今空いているお席は1時間半でしたらご利用いただけます」といったご案内をしたり、メニューを伺ったりするだけでも苦戦していました。聞き間違いによるオーダーミスが発生することもしばしば。店舗効率やお客様満足度に対する課題は感じていました。
そこで一人ひとりのお客様に良質なサービスを提供し続けられるよう、ポケトークの導入を希望していました。
全社的に見ても外国語翻訳のニーズは明確だったので、以前はスマートフォンを使ってWeb翻訳サービスで対応しようといった声は出ていたんです。
私たちが創業時から貫いているのは、ビールの美味しさを通じて、全てのお客様に喜びの体験を提供し感動していただくこと。そのために弊社の歴史や理念、ビールや料理へのこだわりについては、どの言葉であろうと正しく伝えなければなりません。
しかしWeb翻訳アプリでは業界用語に対応しておらず、どこか違和感の残る訳になってしまうことも少なくありませんでした。「全く違うわけではないけど、そうじゃない」モヤモヤが残るんです。
一方でポケトークの翻訳精度は以前から高いと信頼していましたし、スマートフォンを1台ずつ店舗に導入するよりは、専用の翻訳端末を導入した方が将来的にお客様のためにも良いと思い、今回最新版「ポケトークS Plus」の導入に至りました。
──ポケトーク導入後はどのように変わりましたか?
さまざまな変化がありましたが、全て「お客様に期待以上のサービスを提供する」ことに繋がっていると思います。
まずは接客のコミュニケーションレベルが上がったことです。
例えば食材のアレルギー対応に関して、お客様からご要望をいただくことがあります。ベジタリアンやヴィーガンの方からのリクエストが多いですが、一概に「ベジタリアン」「ヴィーガン」といっても、何をどの程度まで摂取できないかはお客様によってさまざまです。身体に害を及ぼしかねないような重度のアレルギーをお持ちの方も稀にいらっしゃいます。
そこでポケトークがあると、食材アレルギーについて相手の母語で丁寧にヒアリングし、情報を正確に把握し、できるかぎり個別対応して良いサービスを提供できるよう歩み寄ることができます。
また、店舗の接客効率も改善されました。
外国語対応となると少なくとも5〜6分は見積もらないといけなかったオーダー対応が、今では日本語のオペレーションと変わらない2〜3分に収まっています。
時間的かつ心理的余裕が生まれることによって、料理を召し上がられたお客様のところへ伺って「お味はどうでしたか?」と尋ねるスタッフも自然と出てきました。
──ポケトーク導入前は、メニュー翻訳の不自然さを指摘されたこともあったそうですね。
そうなんです。メニュー翻訳を外注すると高額な費用がかかってしまうので、自分たちでできるところは自分たちで翻訳する工夫をしています。
しかしながら以前、ヨーロッパからいらっしゃったお客様から「このメニューの翻訳が不自然なんだけど」とご指摘を受けてしまったことがありました。
それもそのはずで、ただの直訳では伝わらないメニューの良さがあるんですよね。当店メニューの「牛すじのアラビアータ煮込み」や「知床鶏のグリル 炭火の香り」なんかは直訳ではなかなか特徴が伝わりません。「”さっぱり”彩り野菜サラダ」も、「Clean Colorful Salad」などと翻訳されると意味合いが違ってしまいます。
その点ポケトークは翻訳精度が高く、日本語のメニューをポケトークに向かって音声入力するだけで「これだ!」と思える訳が返ってきます。単純翻訳できないものは、日本語のメニューの言い回しを変えて、英語に翻訳されても不自然にならないように工夫しています。おかげでポケトーク翻訳を導入してからは、外国語メニューの違和感をお客様にご指摘いただくことがなくなりました。
最近はTTO(テーブルトップオーダー)機器も導入し、操作方法もポケトークで翻訳しましたが、問題なくお使いいただけています。
──スタッフの皆さんへポケトークの導入指導は行われましたか?
いえ、ポケトークは直感的でわかりやすいので、誰もが説明書を読まずに使ってくれていますね。こちらが特に促さなくても、もはやなくてはならない存在なので皆んな自然と手にしているのだと思います。
私は頻繁に首から下げていまして、お客様の方から「ちょっとそれ貸して」とお声がけいただくこともあります。
──店舗接客以外でメリットを感じた点はありますか?
広報の業務ですと、外国語のガイドブック向けの取材でポケトークを活用しています。
特にカメラ翻訳機能は、どんな言葉で書かれた原稿でも、スマホで写真を撮るのと同じ要領でかざせば日本語に翻訳されるので、外国語原稿チェックの負担がだいぶ軽くなりました。馴染みのない言葉の原稿を、英語に訳して確認し、また英語で修正などの指示を出すのは大変ですから。
公式ホームページや店舗メニューも、一人でも多くのお客様にそれぞれの母語でサービスを提供できるように、多くの言語で用意していきたいんです。ポケトークはさまざまな面で今後も活用させていただくことが多いと感じています。
店舗においては、近くで現在リニューアル工事中のファッション関連ショップがありまして、位置が近いので、皆さん地図で調べて場所を尋ねてくださるんです。
実は〇〇日までリニューアル工事中で店舗が一時的にやっていないんです、という事実をお伝えしたいのですが、自分たちの英語力だと「Closed.(閉店しました)」が限界で…。
でもリニューアルによる一時的なものと閉店って意味が違うじゃないですか。情報を正しく伝えられずに申し訳なさを感じていたのですが、ポケトークがあれば誤解を招くことなくコミュニケーションを取ることができるので重宝しています。
あとは大きな店舗になればなるほど、調理場やホールで外国人スタッフも増える傾向にあるので、そうしたところでは従業員同士の会話にもポケトークが活躍していると聞きます。
海外からのお客様に対しても、社内コミュニケーションにおいても、総合的に良い結果をもたらしてくれていると感じています。
──これからどのような店舗にしていきたいですか?
常にお客様がいらっしゃって賑わう店にしていきたいです。
一般的に飲食店は、お昼ご飯と夜ご飯の中間にあたる、14時〜17時のいわゆる「アイドルタイム」にお客さん層が薄くなる傾向にありますが、弊社のブランド店舗では、お料理ではなくビールをメインにご堪能いただく方もいらっしゃいます。お昼ご飯を食べた後でいらっしゃって、次はどこへ行こうか、など観光プランを立てられているんですね。おすすめのスポットを尋ねていただくこともあります。
外国語が必要となると、ちょっとしたコミュニケーションでも億劫になってしまいがちです。それがポケトークを持っていると「いつも通りでいいんだ」と思えて安心しますし、マニュアル通りの接客ではなく、積極的に対話をしたいと思えるようになります。
今後もお客様にとって近しい距離で楽しめる、そんな場所にしていきたいです。