特定非営利活動法人
TMAT様の緊急医療支援チームの場合

トルコ地震 医療x緊急支援の現場でのポケトーク活用

  • トルコ地震 医療x緊急支援の現場でのポケトーク活用

2023年2月6日、トルコ南東部にて発生したマグニチュード7.8の地震は、国境を越えたシリアを含めた両国で死者5万人以上、負傷者10万人以上の被害を出しました。

NPO法人TMAT(※)は地震被害の復旧・復興支援のため、2月7日〜3月2日の期間でトルコ共和国に総勢23名を派遣し、災害医療支援活動を実施。その緊急医療支援チームに参加した、伊豫田かなえ看護師にお話を伺いました。
※医療法人・徳洲会がつくった被災地医療の専門チーム

今回ポケトークを使ったきっかけを教えてください

ポケトークは、トルコ南東部地震が起こる前から知っていました。

私が派遣されたオスマニエ県バーチェは、トルコの内陸部にある人口約2万人程度の小さな町です。地震で多くの建物が倒壊し、避難生活を余儀なくされている住民が多くいました。そうした状態では 日本語はおろか、英語も十分には通じないかもと思い、ポケトークを持って行きました。

  • 臨時で建てられた仮設テント
    臨時で建てられた仮設テント

実際、地域で唯一の病院である「バーチェリハビリ病院(公立)」は機能停止状態で、英語はほとんど通じなかったです。病院の敷地内でテントによる仮設診療所を設置して、外科系患者を中心に診療支援を行いました。

医療通訳メンバーはいなかったのですか?

日本語とトルコ語の通訳が何人かいました。ただ現場はどこも忙しく、患者さん対応で今すぐ通訳が必要なときに頼れないこともありました。

医療現場では、点滴や処置などの医療行為以外でも、常に言葉が飛び交っているんです。例えば、患者さんに簡単な問診をするときや、「お怪我されませんでしたか?」「今日の体調はどうですか?」など声をかけたいとき。あとは病院の職員や医療チームとの連携も絶えず行われています。特に今回のように、必要物資の不足や言語の壁があると、より一層コミュニケーションのハードルが高くなります。

そんなときに通訳の方が来てくれるのを待っていたら、必要な対応が遅れてしまう。そこでポケトークを首からぶら下げて、いつでも使えるように身につけていました。

  • ポケトークを使う伊豫田さん
    ポケトークを使う伊豫田さん

ポケトークを使った支援で印象的だったエピソードを教えてください

ポケトークがあったからこそ、「言葉の壁」を超えた関係作りがスムーズだったことです。

医療現場では、患者さんにまず「この人なら大丈夫だ」と信頼してもらうことが必要不可欠です。もちろん正確な通訳も求められますが、そのベースに心の繋がりがないと信頼関係は築けません。

一般的に、通訳の方がいらっしゃると、どうしても話すべき相手ではなく、通訳の方の目を見てしまいがちじゃないですか。でもポケトークは端末なので、本来の話し相手とのコミュニケーションに集中できるんです。ポケトークの「日本語⇄トルコ語」の通訳を耳で聞きながら、目は相手の表情を見たまま話す。そうすると、相手も私の目を見ながら話してくれる。そこで会話が成り立つ感じがすごくありました。

災害でご家族を亡くされた患者さんと、お互いに目を見て話して、理解して、その場でハグをしたりもして。「◯◯が必要です」「◯◯の処置をします」といった機械的なやりとりだけでない、心に寄り添った支援の一番大切なところは言葉だというのは改めて思わされました。

  • 伊豫田さんの目を見てトルコ語で会話をする女の子
    伊豫田さんの目を見てトルコ語で会話をする女の子
  • ポケトークが翻訳した、被害に合った方の言葉
    ポケトークが翻訳した、被害に合った方の言葉

あとは患者さんにとっても、通訳を通さずとも自分の言葉で話せることが安心材料になっていると感じました。テンポ良くお互いの母語で会話できるのは心のケアや安心感に繋がるのだなと。

実際自分も海外の病院にかかったとき、英語もわからないわけではないですけど、それでも日本語のできる方がいらっしゃると安心しますしね。

ポケトークを使った会話の様子

  • ポケトークを使った会話の様子

ポケトークの使いやすさはいかがでしたか?

ポケトーク端末は見た目もシンプルで、特に驚いた表情もされなかったので直感的に伝わったようです。私がポケトーク端末のボタンを押して日本語で話したことが、すぐにトルコ語に翻訳され、また私がボタンを押すと相手が自然とトルコ語で返してくれました。

簡単な挨拶やお礼の言葉など、なるべく現地の言葉は覚えていきましたが、患者さんたちを理解する上でもっと踏み込んだ会話をポケトークで継続できるのは心強かったです。今後もさまざまな現場に持ち運びたいと思います。

  • ポケトークの使いやすさはいかがでしたか?

TMAT運営事務局 野口幸洋さんより

  • TMAT運営事務局 野口幸洋さん

今回のトルコ地震は日本時間の2月6日朝10時頃に発生しましたが、翌日には「先遣隊」という調査チーム3名を派遣、2月9日には正式に医療チーム本隊の募集を開始、12日からは現地で本格的な医療支援活動を開始しました。

緊急支援なので、もちろん言語研修を行っている時間はありません。必ずしも英語が通じるとは限らない地域も多く、またしっかりとした現地語通訳がチームいる保障もなく、そのような状況でも過酷な災害現場で活動しなければなりません。

そんな中でポケトークがあると、言葉の壁がなくなり、より支障なく活動できると実感しました。よく「日本語 → 英語 → トルコ語」と間に「英語」を挟んで通訳することもありますが、これでは現場でのコミュニケーションが遅くなりますし、入ってくる情報も少なくなります。現地語で直接会話が可能なポケトークは、チームのポテンシャルを最大限発揮するためには非常に重要なツールだと確信しています。

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