ポケトークで英語の苦手を克服!受験勉強の効率化にも期待
山梨県富士吉田市にある私立富士学苑中学校では、2年生の英語のクラスで、ポケトークを活用した新しいスタイルの授業を実施しています。
支給されているポケトークは一人一台。今回はポケトーク導入によって生徒の気持ちや授業成果にどのような変化があったのか取材しました。
山口 陽子先生
富士学苑高校、こども園、英語塾講師など25年以上英語を教えている。
2年前より富士学苑中学校に勤務。
武藤 亮汰さん
富士学苑中学校2年生。興味のあることは野球。
渡邉 凛愛さん
富士学苑中学校2年生。興味のあることは美容関連。
ポケトークの活用方法①スピーキングの練習台
普段は英語を使う機会がほとんどないので、スピーキングは苦手でした。発音が難しい単語があったり、文法が正しいか不安になってしまったりすると、積極的に発言できなくなってしまいます。伝えたいことをどう英語で言ったら良いかわからなかったら、先生が来てくれるまで待つか、自分で辞書を使って調べていて時間がかかっていました。
今は一人一台ポケトークを持っているので、言いたいことの英訳がわからなければまず日本語で話しかけて、すぐに出てくる翻訳を真似して自分でも言えるようになるのが嬉しいです。クラスメイトと英語で会話がはずむのも新鮮で面白いです。
スピーキングのあとは翻訳履歴を見返して「あ、こう言えば良かったんだ」と次回は言えるように覚えるようにしています。
ポケトークの活用方法②カメラ機能で教科書を翻訳
教科書や先生の板書にわからない文章や単語が出てきたら、ポケトークのカメラ機能を使って翻訳します。
スマホで写真を撮る時のように、わからない英語の部分にポケトークをかざすと、すぐに日本語で意味が出てきます。辞書で一つひとつの単語の意味を調べて自分で訳すよりも、ポケトークの方が早くて正確なのでとても便利に感じました。
他の教科の勉強や部活動があって日々忙しい中で、これから受験になるとますます時間に追われることが多くなると思います。
そうした時にポケトークがあると、いちいち辞書を引かなくても、誰かに聞きに行く必要がありません。自分一人で勉強していても、すぐに英語の意味を理解して効率良く学ぶことができるので心強いです。
【生徒に聞いてみました】
「ポケトークは英語力向上や受験に有効だと思いますか?」という問いに対して約8割がYesと回答(N=24)しています。
長い文章でも先生が黒板に書いた文字でも、すぐに翻訳されるのでテスト勉強や受験でとても重宝すると思います。
英語教師の立場からみるポケトークの有用性
山口先生:ポケトーク導入による目に見える効果は、授業の効率化と、生徒の苦手意識の変化です。
中学校の英語教育では「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を総合的に伸ばすことが求められていますが、ことスピーキングに関しては他のアクティビティと比較しても練習の機会が少なく、今までは生徒一人ずつ順番に音読してもらってフィードバックを返すにとどまっていました。
一方でポケトークがあると、クラス全員が同時にスピーキングの練習ができ、かつ自分の音声が端末に正しく認識されるか否かで、発音のチェックもできます。
もちろん口や舌の形を教えたり、ジェスチャー付きで対面で話したり、ALT(※)にしかできないことも沢山ありますが、急にクラス全員の前で音読するのは勇気がいりますし、まずはポケトークを使って一人で練習してから発言する方が心理的ハードルも低いでしょう。
特に興味深かったのは、英語が得意な子でも、ポケトークに話しかけた英語のフレーズが必ずしも正確に認識されるわけではなかったということです。
高度な音声認識技術を搭載していても、前後の文脈がずれていたり、はっきりと発話できていなかったりすると、ポケトークが「そうじゃないよ」と教えてくれているかのようです。
英語を苦手とする生徒からすると、普段テストの点数が良いクラスメートがポケトークで発音を直されていることが意外だったのでしょう。「なんだ、皆最初は間違えるんだ」「発音に自信がなくても恥ずかしがらずにチャレンジしよう」という前向きな雰囲気がクラスに生まれたんです。
中学2年生となると、英語が得意な子とそうでない子の差がつき始める頃ですから、生徒の英語学習に対するモチベーションにも良い刺激が加わっていると確信しています。
【生徒に聞いてみました】
同クラスで英語学習に関する意識調査を実施したところ、クラス開始直後に「英語が非常に好き/ 得意」「どちらかといえば好き/ 得意」と答えた生徒が30%だったのに対し、2ヶ月後には49%(+19%)と約半数が英語に対して前向きな意識を持っていることがわかりました。
以前は、難しい単語の発音を間違えるのが恥ずかしくて、英語のクラスはあまり好きではありませんでした。ポケトークを使うようになってからは、自分の言葉が通じるので、英語を使うのが楽しみになりました。
今後もポケトークを使っていきますか?
山口先生:もちろんです。英語の授業なのにAI翻訳機に頼って大丈夫なのかと心配される声も聞きますが、今ある技術を活用せず、生徒たちに英語や外国文化への苦手意識を植え付けてしまう方が解決すべき課題だと思っています。
英語を楽しいと思ってもらえれば、教師としてお尻を叩くようなことをしなくとも、生徒たちが自ら勉強に励んでくれるのはそう難しくないからです。実際に私のクラスでは、学年最初のテスト(4月)と夏休み前の中間テスト(6月)のクラス平均点が、リーディングは33%、ライティングは20%も向上しました(※)。
これからの世界はAI翻訳・通訳がもっと当たり前になっていくでしょう。
そうした時に大切なのは、AI翻訳機なしで英語を使いこなす能力ではなく、AI翻訳機のような最新技術を活用しながら、外国語でより自由により積極的に会話できる強かな異文化コミュニケーション力を身に付けることではないでしょうか。
長らく英語を教えてきた立場として思うのは、やはり語学学習の本質的なゴールは、しっかりと自分の意思を伝え、相手の言葉も理解する、相互のやりとりです。正しい文法や英単語の暗記は、そこまでの過程にすぎません。でもそこでつまずいて英語が苦手になってしまったら本末転倒じゃないですか。
ポケトークは英語学習者が直面する言葉の壁を無に帰し、コミュニケーションの本質的な喜びや楽しさを感じさせてくれる心強いバディーだと確信しています。生徒に英語の魅力をもっと伝えられるよう、これからもクラスで活用していきます。
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