スリランカの山奥で見つけた「海外ボランティア×リモートワーク」という生き方

平石武

平石武

2024年09月28日

「新しい生き方に挑んでみたい」という思い

僕はフリーランスでデザインの仕事をしながら、春~夏は日本国内、秋~冬はアジアの暖かい国で過ごすという年じゅう半袖ノマド生活を送っています。

そんな気ままな住所不定生活も4年目に入り、この暮らしをとても気に入ってはいるのものの…

なにか新しい生き方にチャレンジしてみたい

という思いが最近になって芽生えてきました。

海外ボランティアという選択肢

その一つの答えとして自分が辿り着いたのが「海外ボランティア」でした。

ノマド生活では「好きな場所を旅する自由」や「ストレスフリーな暮らし」など、とても大きな恩恵が得られた一方で、「失ったこと」もあります。僕の場合は「リアルでの継続的な繋がり」、つまり対面のコミュニティ活動です。

国内では多くの地域コミュニティと繋がりを築き、それが旅を豊かにしてくれた!

英語力そこそこ&引っ込み思案気味の自分は、海外だと1人で過ごす時間がほとんど。出会いの機会はあっても、観光の枠を出ない薄い繋がりで終わってしまいがち…。

これはこれで貴重だし楽しいのだけれど…

そんな社会との繋がりロスを埋めてくれる可能性を、僕はボランティア活動に感じました。

スリランカで若者支援NPOに参加してみる

とはいえ、ボランティアは個人の目的を満たすためだけに行うものではないので、理念に共感でき、かつ自分のリソースが役立ちそうな取組みを探した結果、スリランカでボランティア活動を行う機会を得ました。

スリランカの経済の中心と言えばコロンボですが、今回はそこから遠く離れた山奥にて、地元の若者支援を行うNPOにボランティアとして約2週間参加させていただきました。

コミュニティ「MkCYM(マキシム)」代表メンバーの皆さんと

スリランカでは出稼ぎのために国を出る若者がどんどん増えており、

「海外で成功するか、自国で堕落するか」
「医者になるか、ブルーカラーか」

みたいな極端な考えを持っている若者や親も少なくないそうです。

僕が今回参加させてもらったMkCYM(マキシム)というコミュニティではそんな現状を課題に感じ、スリランカ国内でも充実したキャリアを築くための啓発活動を若者やその親に対して行っています。

滞在中にお手伝いした「子ども向けリーダーシッププログラム」の様子

なぜスリランカ?

今回スリランカという国を選んだひとつの理由は、訪れたことがない国に行きたかったという個人的なものでした。

そして、北海道よりも小さなこの島国に詰まった歴史や文化など、知らないことだらけのスリランカという国はずっと気になる国のひとつでした。

日本とは仏教国&島国という共通点をもつスリランカだが、その歴史や文化は大きく異なる

また、経済破綻や他国からの圧力のような穏やかでないニュースが聞こえてくる中で行われる大統領選。その大きな変化の波の中を現地の人たちがどう生きているのかを見てみたいという思いもあり、今回の渡航先に決めました。

活動内容

NPOとしてのメイン活動である子ども向けリーダーシッププログラムのお手伝いや、事業の1つであるお茶栽培をお手伝いさせてもらいました。

子どもだちへの⁠教育プログラムは、リーダーシップからキャリアの築き方まで幅広いトピックについて、瞑想やアクティビティ、アニメ鑑賞なども織り交ぜて楽しく学ぶというユニークなものです。日本語版があったらぜひ受けてみたいな~なんて考えながら、イベントの撮影やプロモーションの面で協力させてもらいました。

地元の子どもたちが学ぶ姿を直に見るのは新鮮な光景!そして彼らにとっても突然来た日本人が写真係をする光景は新鮮だったことだろう笑

また、日本でも「セイロンティー」として知られるスリランカの紅茶は、世界でも有数の生産量を誇る国の重要産業のひとつです。このフィールドで農業を学ぶ若者と一緒にお茶づくり工程の一部を手伝わせてもらいました。

貫禄はあるがひと回り以上年下の若者に農業の教えを乞うわたし笑

ボランティアとしての活動時間は1日約3~4時間ほどで、フリーランスとしての自分の仕事はそれ以外の時間を使って取り組んでいました。

Wifiが使えるスポットがたくさんあって仕事には支障なし

また、他のメンバーとお互いの国のことについて語り合ったり、瞑想のレクチャーを受けたりと、とても充実した自由時間を過ごすことができました。

農作業の後はスタッフのクマラさん夫妻の家でお茶とお菓子をご馳走になりなりながら談笑するのがルーティン

ポケトークという武器

スリランカでは、都市部で大学を卒業した人や観光業に関わるような人たちは完璧に近い英語を話します。一方で、地域や教育環境によって大きな格差があります。今回お世話になったボランティア先でも共通言語を持たない人に多く出会いました。

そんな言葉の壁を突破する仕掛けとして日本から準備してきたのが、今年の6月に手に入れたばかりの「ポケトーク」

今回持ってきたのは「ポケトークS-Plus」という機種

74ある対応言語(2024.9時点)の中にはシンハラ語も含まれており、内蔵SIMはスリランカも通信対象ということは事前に確認済み。パッと取り出してボタンを押しながら話すだけという手軽さ&翻訳精度の高さで、困ったときの秘密兵器になってもらおうとポケットに忍ばせ活動に臨みました。

実際ポケトークは役立ったのか

「残り5%の壁」を突破してくれた!

主にやり取りする人達とは、詰まりながらも意思の疎通は95%英語で頑張りました。…が、お互い英語で説明できない言葉が出てきて会話がストップしてしまうのが残りの5%。そんなとき、僕はこれ見よがしにポケトークを取り出し、ほとんど切り抜けることができました! 滞在後半にはいつも顔を合わせるメンバー間でもポケトークの存在が浸透し、言葉が出てこないときはテーブル上のポケトークを当たり前に手にして使ってくれるという場面も見られました笑

いったん使い方を覚えてもらうとスムーズにお互いの知識不足を補える

英語で表現するのが難しいやり取りが成立することで5%の壁を突破できた

共通言語ナシでも会話が成立する感動!

田舎の大きな山が今回の活動フィールドだったのですが、そこで関わるのはNPOのメンバーだけではありません。地元の皆さんの多くは、超フレンドリーな分、英語はほとんど通じません。。。これまでなら苦笑いで終わってしまっていたような場面でもポケトークを使ってちゃんと会話を交わすことができたのは、個人的にすごく感動的なことでした。

ジェスチャーに頼ったコミュニケーションから一歩踏み込んだ会話が成立したことに感動

滞在中のお守り的存在に

結論として、コミュニケーションに少し不安の残る今回の環境にポケトークを持って行ったのは大正解でした。「困ったときに頼れる存在」としてポケットに入っている安心感が、共通言語の有無に関わらず自分から話しかけるハードルをぐっと下げてくれた気がします。

今回の体験で感じたこと

振り返ってみて、今回の体験は、記事冒頭で述べた「リモートワークで失ったこと」をまさに補ってくれたように思います。というより、補って余りある本当に価値ある経験でした。

観光では絶対アクセスできない出会いや体験を通して、スリランカのディープな魅力に触れ、初訪問で大好きになってしまいました。

ここ最近のスリランカはネガティブなニュースが取り沙汰されがちですが、NPOメンバーと話すなかで、国が持つ豊富なリソースや若者たちが持つ無限のポテンシャルについても知ることができました。

この笑顔を見ると未来は明るく思えてくる

そして、奇しくも滞在の最終日は大統領選挙の実施日というタイミング。

芳しくない現状を作った政治に対して国民が大きな不満を持っているだけに、選挙への関心の高さも相当なものがありました。

皆が期待する革新が国のポテンシャルを爆発させるきっかけになってほしい。短い時間だけど関わることができた僕も切にそう願っています。

「スリランカでのボランティア体験を写真で振り返る」

ここで伝えきれなかった体験の様子やスリランカで触れた自然・文化などを写真で振り返るという記事もアップしました。

ポケトーク

今や言わずと知れた翻訳デバイスの定番です。

Workaway(ワーカウェイ)

今回ボランティア先を探すのに使ったボランティアステイの世界的マッチングプラットフォーム。